Saturday, June 6, 2009

BRAHMANの新作。著作権の勉強になりました。

自分の最も熱烈に応援しているバンドであるBRAHMANの新作が来週発売されます。
初期の作品のセルフカバーですが、その事情を調べていくと、次のような裁判の事例に出会いました。

平成20年10月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ワ)第9613号実演家の権利侵害差止請求事件

平成21年3月25日判決言渡
平成20年(ネ)第10084号実演家の権利侵害差止請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成20年(ワ)第9613号)


原告はメンバー4名。
被告は旧作の発売レーベル。

この裁判を紐解く前提として、著作権と著作隣接権について触れておきます。
うまく説明できるかなあ。

著作権法は、著作物ならびに実演、レコード、放送および有線放送に関し著作者とこれに隣接する権利(著作隣接権)を定めています。
通常は、著作権は複雑であり、利用許諾を得ることが多岐に渡るために、JASRAC(日本音楽著作権協会)に著作権の管理を委託しています。別途著作隣接権はレコード会社等と契約する必要があります。

一審での判決は、原告の主張を認め、旧作の製造販売をしてはならないと決まりました。

以下は東京地裁の判断の抜粋です。

被告は,まず,単なる演奏家は,当該楽曲の著作権者の意向に反して,
演奏契約上の顕著な違反又は人格権の侵害がない限り,著作隣接権の行使
として,演奏を固定したレコードの製造の差止めを求めることはできず,
原告らも,被告に対して,被告の意向に反して行使できる実演家の著作隣
接権を有しないと主張する。
しかしながら,著作隣接権と著作権とは別個独立の権利であり,レコー
ドに固定された演奏についての実演家の著作隣接権の行使が,当該レコー
ドの楽曲についての著作権により制約を受けることはないのであるから,
実演家は,当該楽曲の著作権者等から演奏の依頼を受けて演奏をした場合
であっても,当該楽曲の著作権等に対して,当該演奏が固定されたレコー
ドの製造,販売等の差止めを求めることができることは明らかであり,被
告の上記主張は失当である。

実演家の録音権(著作権法91条
1項)及び譲渡権(同法95条の2第1項)
を侵害するものとされています。

ポイントは、著作権と著作隣接権は全く別物であり、アーティストとしての実演者の権利は、著作権により制約を受けるものではないという点です。

二審でも、上告は棄却されました。


ここからがBRAHMANらしいと思うのですが、
改めて旧作に収録された曲を新たに録音し、バンドスコアまで添付して販売するのです。
当然アレンジも異なります。
もともとライブバンド。曲のアレンジは年月に応じて変わっていきます。
自分も数回ライブに参加して確かめました。
創作者として、演奏家として、表現を続けていくという強い姿勢が感じられます。
初回限定版にはバンドスコア付きです。自分の知る限り業界初の試みでしょう。
楽曲の手法を公開し、アマチュアバンドもどんどんコピーして欲しいと。

一度作られた曲は生き続けます。
表現方法は変わっても。


ちなみに、著作権法や知的財産権に関する裁判も多いことを改めて知りました。
知的財産判例データベースなるサイトも発見しました。遅いかな。

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